論文タイトル
De novo design of miniprotein agonists and antagonists targeting G protein-coupled receptors
出典
要旨
GPCR に対するアゴニスト・アンタゴニストバインダーをデノボデザインした実施例です。
解説など
Baker 研からの最新のレポートです。本論文ではデノボスキャフォールドのバインダーデザイン事例を紹介していますが、そのターゲットは GPCR です。特有なエピトープ構造や膜タンパク質としての取り扱いの難しさに対処するため、筆者らはデザインと評価の両面から GPCR バインダースクリーニングに適した手法を開発しています。
まずデザインについては、主鎖構造の生成に次の3つのアプローチを採用しています。
- conventional RFdiffusion
- “motif-directed” RFdiffusion
- MetaGen
conventional な RFdiffusion によるバインダー生成では、既報のアプローチと同様に 50,000-100,000 程度のエピトープからミニプロテインスキャフォールドを生成しています。
それに対し、”motif-directed” RFdiffusion では、最初のステップでエピトープと形状相補的な5アミノ酸ペプチドを設計して、次にそのモチーフをスキャフォールディングするという2段階のステップでバインダーを設計しています。モチーフは 1,000 構造ほど生成し、その中でホットスポットと適合性のある配列を 50 種選択した後、各モチーフ対して 1,000 構造のスキャフォールドを付与する流れです。N/C 末端に両側 0~70 残基のアミノ酸を付与して、全長で 65-70 残基に収まるように調整しています。
MetaGen はいわゆる RIFDock を採用するアプローチです。既存のバックボーンライブラリから GPCR エピトープと適合するスキャフォールドを優先的に選択し、RFdiffusion と相補的なデザインとなることを期待しています。
各デザインの配列設計は ProteinMPNN、評価には AF2 の initial guess を利用しています。フィルタリングのクライテリアは下記のとおりです。
- pAE_interaction < 6 ~ 8
- pLDDT_binder > 85 ~ 90
- Rosetta ddG < -45 ~ -50
- sap < 45 ~ 60
評価は通常通り酵母ディスプレイをひとつのアプローチとして採用しています。この場合は抗原はナノディスクに埋めるか抗原発現細胞を用いてスクリーニングします。
もうひとつのスクリーニングアプローチは Optical Pooled Screening-Receptor Diversion (OPS-RD) という手法です。この方法ではまず、デザインライブラリーをレンチウイルスで抗原発現細胞に1細胞1遺伝子で導入します。バインダーは ER に局在するように設計され、イメージングで標的抗原との共局在を確認してスクリーニングします。
これらの方法を下記に示す複数の GPCR に対して適用することで、各標的に対してアゴニストまたはアンタゴニスト活性を示すバインダーのデザインに成功しています。
- MRGPRX1
- CXCR4
- GLP1R
- GIPR
- GCGR
- CGRPR