論文タイトル
Effects of protein interface mutations on protein quality and affinity
出典
要旨
抗体と抗原の結合親和性の変化には、「本来の結合力」と「タンパク質の品質(折りたたみや安定性)」が混在していることが知られています。本研究はこれらを実験的に分離し、多くの変異効果の正体を明らかにしたものです。
解説など
抗体(VHH)と抗原の結合において、変異が与える影響は大きく2つに分けられます。
- protein-interaction(結合そのもの)
→ 抗体と抗原の接触面での相互作用の変化 - protein-quality(タンパク質の品質)
→ 折りたたみ(folding)、安定性(stability)、発現量(expression)
しかし従来の実験では、この2つが混ざった状態で「見かけの親和性(observed affinity)」として測定されていました。筆者らはこれらの影響の違いを分離する評価系を考案し、それぞれの変異効果の寄与を解析しました。
評価系
同じ標的抗原に対して、「主抗体」と、それとは異なるエピトープに結合する「コントロール抗体」を用意します。次に、それぞれの抗体のパラトープおよび抗原のエピトープに対して、deep mutational scanning(DMS)により変異ライブラリを構築し、AlphaSeqを用いて各変異体の結合活性を大規模に測定します。
その上で、抗原に変異を導入した際における「主抗体」と「コントロール抗体」の結合活性の変化量(ΔoKD)を比較します。
- 両者の変化量に差がある場合
→ 変異が主抗体との界面に特異的に影響している
→ 結合そのもの(protein-interaction)の変化と解釈される - 両者の変化量に差がない場合
→ 両抗体に共通して影響が出ている
→ 抗原の折りたたみや安定性などのタンパク質品質(protein-quality)の変化と解釈される
筆者らは、抗原種として、
- SARS-CoV-2 スパイク RBD(受容体結合ドメイン)
- ボツリヌス神経毒素A(Botulinum neurotoxin A)
また、それぞれの抗原に対して、
- 主抗体(primary VHH)
- コントロール抗体(control VHH)
を用意して評価しました。
結果
以下の重要な結果が示されました。
① 多くの変異は「品質」を壊している
② 真に「結合」に効く残基は少ない
③ 既存AIモデルは「品質」を主に学習している
ESM-IF1やThermoMPNNなどのモデルを評価した結果:
- observed affinityとは相関あり
- しかしその多くは protein-qualityの予測によるもの
本研究は、抗体設計分野において長年曖昧だった「親和性データの中身」を明確に分解した点が大きな特徴だと考えられます。従来のDMSや機械学習モデルは、結合そのものではなく、安定性や発現といったタンパク質品質の影響を強く受けていると一般的にも指摘されてきましたが、本研究はそれを実験的に定量分離した点で重要です。


