AIが創薬を自動化する時代へ:自律型抗体設計エージェント「Latent-Y」を解説

論文タイトル

Latent-Y: A Lab-Validated Autonomous Agent for De Novo Drug Design

出典

https://www.latentlabs.com/wp-content/uploads/2026/03/Latent-Y-Technical-Report.pdf

要旨

AIエージェント「Latent-Y」は、テキスト指示だけで抗体やペプチドの設計から検証までを自律的に実行し、実験的に有効な分子を創出できることが示されました。

解説など

Latent Labs からの新しいレポートです。

本研究は、「創薬プロセスをどこまでAIで自動化できるか」という課題に取り組んだものです。筆者らが開発したLatent-Yは、テキストで与えられた創薬目標(例:「IL-6に結合してIL-6Rとの相互作用を阻害する抗体を設計」)から、抗体設計キャンペーン全体を自動実行するAIエージェントです。

主な構成は以下の通りです:

  • LLMベースの推論エンジン
    研究計画の立案や意思決定を担当
  • Latent-X2(分子生成モデル)
    抗体やペプチド配列を生成するモデル(原子レベルで設計)
  • ツール統合環境
    • 文献データベース
    • PDB(タンパク質構造)
    • バイオインフォマティクスツール

エージェントは、全体のプロセスを指揮するオーケストレーターと各個別役割を担うサブエージェントで構成されます。また必要に応じて新しい役割エージェントを自作することも可能です。サブエージェントの例としては、

  • Hotspot researcher:エピトープ候補の特定
  • QA subagent:デザインの品質チェック

が挙げられています。

エージェントの動きは以下のような流れです:

  1. 文献やデータベースからターゲット情報を収集
  2. エピトープ(抗体が結合する部位)を特定
  3. Latent-X2で候補分子を生成
  4. 計算評価(例:DockQ, ipTM)でフィルタリング
  5. 多様性・安全性などをチェックして最終候補を選定

特に重要なのは、本番生成の前に探索(explore)→ 有望条件の集中探索(exploit)という反復的な戦略を取り、ヒット生成効率の高い設計条件を見出している点です。

利用例として、IL-6, IL-6R, PRLに対してnMオーダーの結合親和性を持つ抗体を生成できることを実証しています。また一つの論文情報だけから、「この論文の機能を実現するバインダーを設計せよ」というお題で分子設計を試みています。21報の論文から16のケースでは候補分子の生成まで実現できたとのことです。

Latent Labsは生成モデルの性能改良だけではなく、自身のモデルを簡易に扱えるウェブアプリケーションの開発にも注力していることから、Latent-Yを組み合わせたUXの進歩は非常に大きいでしょう。