ESMFold2を使って10〜20分でナノボディを設計する ― EasyNanoが目指すエピトープ標的CDRデザイン

論文タイトル

EasyNano: rapid epitope-targeted nanobody CDR design via differentiable distogram optimization with ESMFold2

出典

EasyNano: rapid epitope-targeted nanobody CDR design via differentiable distogram optimization with ESMFold2
Computational design of nanobodies that bind user-specified protein epitopes could transform therapeutic development, but current methods either rely on stochas...

要旨

本研究では、ユーザーが指定したエピトープ(抗原上の狙いたい部位)に結合するナノボディのCDR配列を高速に設計する手法「EasyNano」が提案されました。

解説など

筆者らの提案する手法「EasyNano」は、既知ナノボディのCDRのipTMを最適化するための手法です。

EasyNanoの特徴は、ESMFold2が予測する残基間距離分布(distogram)を最適化対象として利用する点です。ipTM(interface predicted TM-score)は抗体と抗原の結合予測に有用な指標ですが、直接最適化するには計算コストが高いため、本研究では距離分布を代理指標として利用しています。具体的には、入力時に指定したエピトープ残基と設計対象となる全CDR残基を対象に残基間距離が最小化する方向に最適化します。

実際には構造を壊さず親抗体の結合界面を維持できるように、エピトープとの距離、構造の整合性、フレームワーク構造の維持などを組み合わせた損失関数を定義し、勾配降下法でCDR配列を更新します。

EasyNanoの機能としての特徴は、既存の逆フォールディングモデルと異なりエピトープ指定ができることや、最適化途中にipTMを計算しないため高速に候補配列を設計できることです。

パイプラインは大きく3段階です。

  1. フルサイズのESMFold2で構造事前情報(structure prior)を計算
  2. ESMFold2-Fastを用いてCDR配列を微分可能に最適化
  3. 最終候補をフルモデルで評価し、ipTMやpTMを算出

実験では、SARS-CoV-2 RBD、PD-L1、TNFαなどを標的とする5種類のナノボディ系で評価が行われました。特にTy1/RBDでは、ipTMが0.143から0.702へ改善し、増加量は+0.559でした。またKN035/PD-L1では0.251から0.459へ改善しました。一方で、もともと高いipTMを持つVHH72やVHH3では性能をほぼ維持しており、既に良好な結合体を大きく壊さない傾向も確認されています。

本研究では、実験評価による結合活性までは確認されていません。ipTMが結合活性と相関するかが本手法の大きなカギといえるでしょう。