論文タイトル
Sequence and structural determinants of efficacious de novo chimaeric antigen receptors
出典

Sequence and structural determinants of efficacious de novo chimaeric antigen receptors - Nature Biomedical Engineering
A generative protein design workflow addresses important challenges with de novo protein engineering of chimaeric antigen receptors (CARs) to improve targeting ...
要旨
本研究は、AIで設計した小型の結合タンパク質(ミニバインダー)をCAR-T細胞の抗原認識ドメインとして使えるかを、BCMA・CD19・CD22の3抗原に対する計1,758個で検証しています。その結果、CARとして使う際の障壁として「恒常的シグナル」「エピトープの遮蔽」「オフターゲット活性」の3つを特定し、結合界面以外の配列を変えることで、標的への活性を保ちつつ問題を軽減できることを示しました。
用語
- CD69 / 活性ゲイン: CD69はT細胞が活性化すると速やかに発現する表面マーカーで、本研究ではCAR陽性細胞のうちCD69陽性の割合を活性化の指標にしています。活性ゲインは「抗原陽性細胞と共培養したときのCD69陽性率」から「CAR細胞単独の陽性率」を引いた値で、抗原特異的な活性化の強さを表します。
- ipSAE: 構造予測モデルが出力する、複合体の鎖間(インターフェース)の信頼度指標の1つです。
解説など
背景
CARの抗原認識ドメインは、これまでscFvが中心でした。一方、RFdiffusionやBindCraftなどで設計する約60アミノ酸のミニバインダーには、in silicoでの迅速な設計、安定性、狙うエピトープの事前指定といった利点があり、scFv由来のCARが抱える課題(凝集による恒常的シグナルなど)を克服できると期待されています。しかし、これまでの評価は組換えタンパク質への結合が中心で、CAR-T細胞としての評価は限られていました。
本論文の特徴
- 3つの抗原(BCMA、CD19、CD22)に対する計1,758個のAI設計バインダーを、酵母ディスプレイ、CARを発現させたJurkat細胞、初代T細胞、マウス移植モデルで評価しています。
- 「CARPNN」というワークフローを開発しています。機能した親バインダーを出発点に、ProteinMPNN系のモデルで界面と非界面の残基を変えた配列を多数作り、構造予測モデル(Boltz)による再予測でフィルタして、実験で試す変異体を選びます。詳細は次の「設計手法」で説明します。
設計手法
親バインダーの設計(2つの方法)
- RFdiffusion系: 拡散モデルのRFdiffusionで、バインダーの主鎖(30〜90残基)を生成します。次にProteinMPNNで、その形に合う配列を主鎖1本あたり10個設計します。最後にAlphaFold2で標的との複合体を予測して検算し、複合体pLDDT>80かつpAE interaction<10の設計だけを残します。
- BindCraft: ホットスポットを指定せず、主に50〜65残基のバインダーを作ります(CD19のBC2のみ100〜200残基)。内蔵のフィルタを通った設計から、ipTM順に約100〜125個を選びます。
CARPNN(親バインダーの配列進化)
入力は、機能が確認できた親バインダーと標的の複合体構造です。出力は、主鎖はほぼ同じで配列だけが異なる、実験用の変異体(各キャンペーンで20個ほど)です。
- バインダーの残基を、標的の原子から4Å以内にある「界面」と、それ以外の「非界面」に分けます。
- SolubleMPNN(可溶性の構造だけで学習したProteinMPNN)で、界面だけ、または非界面だけを変えた配列を、それぞれ2,000個(BCMA)または5,000個(CD19・CD22)生成します。
- 親との配列の違いが小さいものを除きます。
- Boltzで標的との複合体を再予測し、BindCraftのフィルタに相当する指標(pLDDTなど)を、5つの予測の平均で評価します。主鎖が親から1Å超ずれたものは除外します。
- 界面変異体は「界面の水素結合数とdSASA」、非界面変異体は「疎水性残基数と総電荷」でクラスタリングし、各クラスタの代表を選びます。
結果
BCMA: AI設計バインダーはCARとして機能した
- 酵母ディスプレイでBCMAに結合した割合は、BindCraftで10.7%、RFdiffusionは最大2.4%でした。BindCraft由来のB5は、初代T細胞で臨床scFvと同等以上のエフェクター分子(サイトカインなど)を産生しました。
- B5からCARPNNで得たB5.I0は、マウスの多発性骨髄腫モデルで臨床scFv(C11D5.3)と同様に腫瘍を退縮させました。腫瘍量が多いモデルでは、C11D5.3とCARVYKTIのバインダー(VHH1-VHH2)が制御できなかった中で、B5.I0はほぼ完全に腫瘍を制御しました。
恒常的シグナル ― 鍵は正味電荷
- B5から作った変異体の恒常的シグナルは、バインダーの正味電荷と強く相関しました(r=0.65、P=0.00099)。疎水性や水素結合数など他の指標では強い相関は見られず、電荷が設計時のフィルタとして使える指標になりうることを示唆しています。

