Vilya-1とは?多様なマクロサイクルを原子レベルで扱う構造予測・設計モデル

論文タイトル

Vilya-1: An all-atom foundation model for macrocycle structure prediction and design

出典

Vilya-1: An all-atom foundation model for macrocycle structure prediction and design
Macrocyclic peptides are an increasingly important therapeutic modality, but existing computational methods for modeling their structures and properties are lim...

要旨

本研究では、マクロサイクルの立体構造を生成し、膜透過性などの物性予測や新規分子設計にも利用できる深層学習モデル「Vilya-1」を提案しています。

解説など

Vilya-1は、Vilya, Inc.というマクロサイクル創薬に特化した米国の創薬スタートアップが開発しています。

Vilya-1では、対象となるマクロサイクルの構造予測、物性予測、さらにその情報を利用してマクロサイクルの最適化を支援する機能を持ちます。

Vilya-1の中心的な特徴は、ペプチドと低分子を別々の形式で扱わず、分子を構成する重原子を共通の単位として入力する点です。ここでいう重原子とは、水素以外の原子を指します。

この全原子表現により、次のような異なる分子を、同じモデルで扱うことを目指しています。

  • 標準アミノ酸だけで構成された環状ペプチド
  • 非標準アミノ酸を含む環状ペプチド
  • ペプチド部分と非ペプチド部分が混在する分子
  • マクロライドやポリケチド
  • 比較的小さな環状低分子

Vilya-1の特徴

Vilya-1は、拡散モデルを用いて三次元座標を生成します。モデルへの入力には、主に次の情報が含まれます。

  • 各原子の特徴
  • 原子間の結合やペア関係
  • 原子ごとの三次元ベクトル情報

一方で、一般的なタンパク質・リガンド複合体予測モデルとは異なり、Vilya-1は分子種、原子名、配列上の位置情報などの補助的な特徴を入力していません。化学構造に直接関係する情報へ入力を絞ることで、学習データの暗記を抑え、未知分子への一般化を促す狙いがあると本文に記載されています。

学習には、公開されている小分子およびペプチドの結晶構造に加え、計算によって生成したマクロサイクル構造が使用されています。ただし、学習データ全体の正確な件数や、内部データを含む詳細な内訳は本文から確認できませんでした。

構造生成性能の評価

実験構造が既知な分子を対象に、Vilya-1で100個のコンフォマーを生成し、ring RMSDで構造の妥当性を評価しています。

論文に記載された既存手法との比較結果は、次の通りです。

  • Vilya-1:89.2%
  • Schrödinger Prime-MCS:37.6%
  • RDKit ETKDGv3:34.5%
  • ETFlow:17.0%
  • Boltz-2:15.2%
  • RF3:14.8%
  • LoQI:10.6%
  • TorDIFF:4.8%

膜透過性などの物性予測

Vilya-1は、生成した三次元構造を利用する物性予測モデルにも拡張されています。

予測対象には、次の項目が含まれます。

  • PAMPAによる受動膜透過性
  • MDCKアッセイによる透過性
  • クロマトグラフィーLogD
  • 速度論的溶解度
  • 三次元極性表面積

内部データのPAMPA予測では、Vilya-1が比較対象のKNNやChemPropより高い濃縮性能を示しました。著者らは、同じ化学系列に属するよく似た化合物間の微妙な違いを判別する場面で、三次元構造情報が有効である可能性を述べています。

新しいマクロサイクルの設計

Vilya-1は、既存の結合モチーフを保ちながら、より小さな環状分子へ組み替える設計にも使われています。

論文では、mRNA displayで同定された13残基と14残基のマクロサイクルから、結合に重要と考えられる部分を取り出し、7残基の新しい環状構造へ組み直した例が示されています。

設計時には、次の条件を同時に最適化しています。

  • 結合モチーフの三次元配置を保つ
  • 予測膜透過性を高める
  • 予測疎水性を高める
  • 溶媒露出極性表面積を小さくする

さらに、Vilya-1はhead-to-tail型の環状ペプチドだけでなく、チオエーテル結合、γ-ラクタム結合、ステープルドヘリックスなど、異なる環化方式を扱えると説明されています。